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富永美樹の自転車コラム 主婦、時々サイクリスト〜主婦から始める充実自転車LIFE〜

2007.03.23

vol.6フツーの主婦、自転車でプチ冒険へ 後編

えっ、ここ? これを下るの?

期待にいささか胸をふくらませながら走り出した私たちをいきなり待ちうけていたもの、それはトレイルの入り口にある急坂だった。
かなりの角度なうえに、路面には石やら砂利やらで、もう見るからに滑りそうな感じ。
しかも下ったその少し先には、同じような角度の、今度は上りが待ち受けていた。
「うわー、ぜったいムリ。絶対転ぶ…」
……もうちょっと心の準備ってものができてからにしてよぉ。
これは行くべきなのか、ひとまず大事をとって押して下りるべきなのか。
しょっぱなでいきなりケガしても、ねぇ…。

…などと考えながら、坂の上で立ち尽くすこと数分。
「コワかったらムリしなくていいヨ」。ポールのこの一言で主婦の心は決まった。

ここまで来て、朝5時前に起きて八ヶ岳まで来て、押して下りれるかっつーの!(…と心の中でなぜか半ギレ)
とりあえず深呼吸。「じゃぁ、行きます!」
心から思った。
「あぁ、汚れてもいい服を着てきてよかったぁぁぁぁぁぁぁ…」


いやぁ〜、こんなに「いっぱいいっぱいな自分」は久しぶりだ。
坂の途中で何度かヒヤっとした気はするが、気がつけば坂の下に…いた。
「はぁー、下りれた…」。ホッとするも今度はすごい上り。
自分なりに必死にこいではみたものの、やっぱり途中であえなく断念、残りは押して上がる。
こうして最初の難関をどうにかくぐりぬけ、私たち3人は森の中へと吸い込まれていった。

「それにしても、森の中を走るってなんて気持ちがいいんだろ。」
さっきまでの、体が硬直しちゃうほどのキンチョー感や恐怖心はどこへやら、少し湿ったにおいのする森の中を、自転車にまたがり進んでいく。
おいしい空気に鳥のさえずり、時折さしこむまぶしい陽射し。
このうえなく気持ちのいいトレイルを、時には下りのスピード感を楽しみながら、時にはやっぱり上れないほどの坂に悪戦苦闘しながら、でもだんだんとその、「上れない自分」をちょっとくやしく思う自分もいたりすることに気づく。

「こんな急な坂、フツーの女の人でも上れるの?」
「上れるヨ。もうちょっと体力、もうちょっと練習ネ」

そうかぁー。今度来たときには上ってやる…。
フツフツと、なぜか?闘争心のようなものがわきあがってきているフツーの主婦。
そんなことを思いながらこいでいると、突然目の前がパーっと開けた。

「うわ、なに、ここ?」

八ヶ岳のふもとに広がる森の中に突如開けた草原。
黄色い草に紅葉した木々、そのうしろには山なみが…。まさか森をぬけたらこんな景色が待ってるなんて。
「きれ〜い…」まさに自転車に乗ってここまで来たから見ることのできた風景だ、と思った。
自分の足だけでは、歩きではここまでは来れなかった。自転車が私をここに連れてきてくれた…。
そう思った瞬間、私の中で自転車は「魔法のじゅうたん」になった。
きっとこの乗り物は私をいろんな景色に連れていってくれるじゅうたんだ。
あ、でも自分でこがなきゃどこにも着かないから「魔法の」じゃないか。
そんなことをランチを食べながら思っていた。MTBでもっといろんなところに行ってみたいかも、そう思った。

こんなに楽しいの、初めて

そして、その日の午後。ちょっとずつ感じ始めていた自転車とのキズナは確信に変わる。
1日のしめくくり、私たちはシングルトラックを下っていた。
細いトラックの上で木の根や石をよけながら、瞬時の判断が要求される下り。一瞬の判断ミスも許されないキンチョー感。
数メートル先を見ながら路面を読み、瞬時に自分のとるべきルートを決定して自転車を操縦する。
それはまさに「操る」という感覚だった。
「これ、すごい楽しいかも…」
操れば操るほど自転車との一体感が増していく。
そして一体感を感じるたび、自転車は私の「相棒」になっていく。
自分の意思でハンドルを切るたびに脳の中でなにかが噴き出してくるかのような感じを覚えた。
「右、左、あ、根っこ、あの石と石のあいだ!」
頭の中でなにかが爆発した。
「こんなに楽しい!と思うこと、初めて…」

「終わっちゃった…」そのシングルトラックを下りきったときは心底残念で、でも心底疲れていた。
脳みそも体も使う、なんてエキサイティングな体験…。
しょーじき、30半ばになってこんなに楽しいと思えることに出会えるとは、昨日まで、まったく考えてもいなかった。
「たぶん、この感覚は忘れられない…」という確信があった。

この日から自転車は私の生活になくてはならないものになった。
私といろんな場所に遊びに行ってくれる、相棒として、いつもそこにいるようになったのだ。


ついにキター。核心のシングルトラック体験。
スリルとサスペンス、そしてほどよいキンチョー感。
もっとスゴいのあるの?
はやく教えて! 次週が待てない!(編集部)

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