2007.04.20 NEW!
フツーの主婦は、本気だ
突然やってきた相棒との別れ
「あれ、ない?」
人間、にわかには信じられない事態に遭遇すると体が震えるものなんだ、ということがわかった。
あのときの感覚は今でも忘れられない。小刻みに震える右手。
不安ではりさけそうな心臓。
その瞬間、マネージャーさんに向かって駆け出しながら絶叫していた。
「ない!自転車が……ない!」
それはレギュラーラジオの初日だった。
J-WAVEのWebラジオ、Brand-new Jという番組でDJをすることになった主婦はスタジオまで愛車で向かおうと計画。
ブースの中がかなり広いスタジオだったので、当然、ビルの中まで持っていって、スタジオ内に置かせてもらおう、
それが一番メイワクにならないだろうし、と思っていた。
しかし。
ビルのエントランスに自転車を押して入っていくと、どこからか警備員が現れ
「このビル内に自転車を持ち込むことはできません」と言う。
知らなかったから今回だけ…、とか、「今日だけ特別に入れさせてもらってます」と紙に書いて自転車に貼っておくから、とか、
ビルの敷地内に駐輪場があったのでせめてそこに…、とか、いろいろお願いしてみたのだけど、
ダメ、ダメ、ビルのオーナー会社の駐輪場だからダメ、とダメの一点張り。
生放送の時間もせまり、あきらめるしかないフツーの主婦。
歩道のガードレールに泣く泣く相棒をくくり、鍵をかけ、シートピラーごとお気に入りのピンクのサドルだけは
手に携えてスタジオへ上がった。
4時間後。
「あった…。よかったぁ…」
心底ホっとした。しかし、20分ほど、翌日の仕事の打ち合わせを…、ということになり10m先のカフェへ。
そう、たった10mだったんだ。店の前まで連れて行ってあげることがどうしてできなかったんだろう。
4時間問題なかったからあと20分くらい大丈夫…と、主婦は安心してしまったのだった。
そして…冒頭のシーンだ。
これが突然やってきた相棒との別れだった。
自転車は主婦の相棒でありつづけるんだ

もう、その後は3日間ほど、泣いてすごした。仕事中も思い出すと涙がジワッとにじんでくる…。
「こんなに悲しいできごとは小学生のとき、おばあちゃんが亡くなったとき以来だ…」というくらい、本当に悲しかった。
そして相棒に申し訳なかった。
でも、このまま泣き続けるのも悔しかったのだ。
人の友達を平気で連れ去る悪い人なんかに負けるもんですか。
なにしろ、このままでは富士ヒルクライムに再チャレンジする自転車がない。一緒に遊びに行ってくれる自転車がない。
「泥棒なんかに負けてたまるかぁー。もっといい自転車、買ってやるぅー!」(人間、やけっぱちになりたくなる時もあります…)
そう、主婦の本気を見せてやる。
どんなことがあったって、一生、自転車は主婦の相棒でありつづけるんだ、この自転車を見ればわかるだろ!
…っていう自転車を買おう、と思った。
その日からダンナさんはMTBオールカタログとMTBパーツカタログを手に、眠れない日々を過ごすこととなる。
すぐにフレームの候補は3つくらいにしぼられた。
やはり主婦の体力を考慮して、カーボンか、ちょっとぜいたくなのだがチタンのどちらかで。
あとはサイクルショップに問い合わせ、めぐりあえたものが運命、と思い待っていると。
LitespeedのNIOTA Ti('07モデル)だけが、主婦にぴったりのSサイズの在庫があるという。
もう、この際、値段は関係なかった。しばらく自転車のためだけに働こう…。
その後も「スペック担当」として、1つ1つパーツを選んでいくダンナさん。
主婦は「ビジュアル担当」として、ピンクや水色のパーツばかりを選んでいった。
そして完成したのが主婦の本気を表す1台、愛称「ニオタン」(ちなみに以前の相棒はTREKの「トレッ君」。うわ、寒…)。
なんとペダル、バーエンド込みで実測10.4キロ!(おぉ〜…)
先日、バイシクルライド2007イン東京でようやくデビューを果たし、
いいお天気の中、のんびり東京の街を20キロ、一緒に走りました。
そうそう、このイベントでは、けっこういろいろなみなさんに「サイクルスタイルの連載、読んでます」と言われ、
うれし、はずかしだったフツーの主婦。
そんな主婦の連載は今回で終了。
「週1回のしめきりってけっこうプレッシャー…(汗)」と泣きが入りながら書いた回も実はあったけど、
大好きな自転車のことを書くのはとっても楽しかったです。
今はヒルクライムに向けて、あいかわらずのマイペースで、(できるときだけ)練習する日々。
お会いできる方は6月、富士山でお会いしましょう!
読んでくださったみなさんに感謝の気持ちをこめて……富永 美樹。
(Fin)
自転車との別れ、そして新しい出会い。
全10回の連載コラムは今回で終了するが、主婦の自転車ライフはこれからもつづく。
これで終わっていいのか?新たな展開を期待するアンコールは?(編集部)
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