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安井行生のロードバイク徹底インプレッション
【自転車大図鑑】日本で手に入るバイクを目的に合わせてカンタン検索
チタンで世界最軽量の座を獲得したライトスピード・ギザロを試す

チタンのオーソリティ、ライトスピードが放つ超軽量チタンレーシングバイク「ギザロ」
「世界最軽量!」という派手なキャッチコピーだけがクローズアップされがちなバイクだが…
本格的な山岳地帯に持ち込んで、その性能を徹底チェック!
(text:安井行生 photo:我妻英次郎/安井行生)

2009年に打ち上げられるNASAの最新鋭火星探査機、「Mars Rover」。
高温、低温、放射能など宇宙での酷烈な環境に耐え、桁違いの耐久性と正確な動作性が求められるこの「ローバー」のサスペンション部分に、ライトスピード社が設計・製作を担当したチタンパーツが採用される―

―この事実は2つの大切な意味を含んでいる、とライトスピードやマーリン、Quintana Rooなどのバイクの日本正規代理店である(株)アレッセ・コーポレーション代表の滝川さんは言う。
一つは、数々のハイテク素材の中から「チタン」が採用されたということ。
そしてもう一つは、アメリカには数多く存在する、チタンを加工することのできる企業の中から、自転車のフレームメーカーである「ライトスピード社」が選ばれたということ。

航空宇宙産業などの他分野でもその技術の高さを活かして活躍しているライトスピード社が、超軽量レーシングチタンフレームとして発表したのがギザロだ。素材に3/2.5チタンを使用し、菱形断面のトップチューブや左右非対称チェーンステーなどの異形加工が施され、フレーム単体重量770g (Mサイズ/カタログ値) と世界最軽量を誇る。アルミ全盛時代のロードバイクには軽いだけで進まないものも多かったと聞くが、この超軽量チタンフレームの、ロードバイクとしての実力やいかに?
ディテール 01 ディテール 02 ディテール 03
ただ「持って軽い」だけのバイクなのか?
image01ネガティブな予想は吹き飛ばされた
  大幅な軽量化が施され、「史上最軽量フレーム」のキャッチコピーと共にライトスピード・ギザロがモデルチェンジしたとき、フレーム重量770gという数字を実現させるためだけのキワモノ的軽量フレームだと思った。その後スコット・CR-1が発売されて、ギザロの存在理由が薄れたとも思っていた。そんなネガティブな先入観から始まった今回の試乗だったが…

  僕が小柄で体重が軽いということも影響しているだろうが、薄いチューブからは想像できないほどのしっかりとしたBB周りに予想はあっさりと裏切られる。先に試乗したトップモデルのアルコンT1がかなり好印象だっただけに、あまり期待せずにアップダウンコースへと漕ぎ出した僕は3分もたたないうちに、レンズを向けるカメラマンに「なんだ、コレもすげーいいじゃん!」と叫んでいた。

「かかりの良さ」より「伸びの良さ」
  軽量バイクとしての弱点をほとんど感じない。さすがにビッグギア・大トルクで踏み込むとたわみをみせるものの、反力で弾かれるようにすぐ加速を始める。これだ。これがチタンの魅力だ。サイクリストを虜にする優しくて強靭でしなやかなバネ感だ。
   ゼロ加速が良いフレームの中には高速域での加速が鈍くなるものもあるのだが、ギザロは0〜50km/h台まで力強い加速が延々と続く。ビギナーは静止状態からの加速の良さだけで 「このバイクは速い、高性能だ」 と判断しがちで、わざとそのような味付けにしているメーカーもあると聞くが、ギザロの本質はもっと奥深いところにありそうだ。
さすがにしなやかだが、その万能な動力性能はトップレベルにある
複雑に加工されたチタンチューブが織り成すオールラウンドな性能image02
  その本質とは、各チューブの形状・肉厚を複雑に変化させ、「どこにどれだけの力が加わったらどこからどの方向にどれだけ変形する」という設計上のコントロールにあるのだろう。チタンという金属の特性を知り尽くしたライトスピードならではの造り込みだ。その重量からヒルクライム専用車にしてみたいところだが、このバイクのフィールドを上り坂に限定してしまうのは勿体無い。ロードレースにも十分の性能を発揮するだろうし、ロングライドにこんな素晴らしいバイクを使えたら最高だ。

トップモデル「アルコンT1」と軽量バイク「ギザロ」の違い
  今回の試乗ではアルコンT1とギザロというライトスピード社のトップレンジ2台を同時に試乗できるという好機をいただいたのだが、乗り比べてみるとその性格は少し異なる。まず、快適性は2台とも極めて高いのだが振動の伝え方が違う。アルコンは、トントンというショックこそ伝えるものの、チタンの金属特性なのか振動の角が丸く収束が早い。ギザロには極薄パイプの軽量フレーム特有のパリパリとした振動が伝わってくる。しかしフレーム全体がしなやかなので不快だと感じることはなかった。

  トルクをかけたときの進み方も2台には差異がある。アルコンは比較的ダイレクトにトラクションがかかるのに対し、ギザロはしなりを活かして進むイメージだ。ギザロと自分の脚とのリズムが合えば、バイクの振り幅を小さくしたダンシングでスッスッと登るヒルクライムは病み付きになるだろう。もちろん重量的なメリットもかなり大きい。ただし、体重のある人や大トルクで踏み込むようなスタイルのライダーには向いていないか。また、他の軽量カーボンホイールでも乗ってみたのだが、フレームがしなやかな分、ホイールにはある程度しっかりとしたものをチョイスしたほうがこのフレームの良さを引き出せると感じた。
「ライトスピード」の存在意義は、「チタンであること」ではない
image03「持って軽いし、乗っても軽い!」をチタンで実現
  どうもライトスピードというブランドは、加工技術やチタンという素材が持つ表面的な魅力などが先走って我々ユーザーにイメージされがちなのだが、光を当てるべきなのはフレームそのものの設計 (ジオメトリ・チュービング) の良さだということが今回のテストで分かった。素直で伸びが良く、どんな速度域・シチュエーションでもスイスイと進んでくれる、というのはアルコン、ギザロに共通する美点だ。この美点は「チタンフレームである」という上っツラの長所(チタンの輝きや独特の雰囲気、所有欲の充足など)よりもはるかに大きなものであった。当然のことだが、どんなに高級な素材を使ったところで、基本の設計が悪ければ“走る”バイクにはならないのだ。

チタンであること。 世界最軽量の称号。 もしくはライトスピードというブランド?
確かにそれらは魅力的。
だが、ギザロの本質は、乗り手の感覚を包み込んで納得させてしまう超軽量フレームらしからぬ包容力と、意のままに反応する素直で従順な基本性能の良さにある。

  良質な設計と高品質なチタン合金、高度な加工技術とが結びついて生まれたこのメタルフレームは、チタンという素材のみが持つ鈍く妖しい輝きと凛然たる雰囲気、そして「770g」という数字などを (あくまでも“副産物”として) 含みながら、しかしやはりサイクリストを山岳へ、羽の生えたように軽やかなヒルクライムへと誘うのだ。
プロフィール

インプレライダー 安井行生

インプレライダー:安井行生
YUKIO YASUI

大学で機械工学を学んだのち、4年間のメッセンジャー生活を経て現在はサイクルスタイルをメインに活動する自転車ライター。ハンドル幅やクランク長、サドル形状までこだわってポジションを出し、一台につき100km程を走ることでバイクに対する理解度を深め、意味のあるインプレッションを目指す。164cmと小柄なのでフレームサイズで苦労するのだが…体重は52kg、脚質は回転系でヒルクライムと猫が好き。1981年生まれ。

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